第1章 吸血鬼、赤司征十郎
あれ?と思っていると、目の前のドアはギィィ…、と音を立てながら自動的に開いた
…え、自動ドアなんて聞いたことないけれど
茫然としながらも、ドアが開いていくのと同時に部屋の中が見えた
床から天井にかけて、大きな窓があった
カーテンは左右に寄せられて、
淡い月の光が部屋の床を白く照らしている
そんな月明かりの中、ソファーに座っている人影が見えた
ドクン、
嫌でも心臓が鳴った
あれが…
吸血鬼、赤司………、さん、か
その場に立ち尽くしていると、
その人影がゆっくり立ち上がった
逆光で顔が見えないけれど、
どこかで見たことがあるようなシルエット
コツコツ、絨毯の上を革靴が歩く音と一緒に人影も近付いてきた
ドクン、ドクン
思わず俯いた
恐怖なのか何なのか、心臓の心拍数が尋常じゃないくらいに上がる
ドクン
コツ、
ドクン
コツ
ドクン
コツ…
足音が私のすぐ前で止まり、
落とした視線の先には真っ黒な革靴が見えた
「………名前、」
「…………、?」
どこかで聞いたような声
呼ばれた名前は、確かに私の名前
あれ?
…どうして、私の名前を知っているんだろう
姉の名前を知ってるならともかく、
お呼びでない私の名前をなぜ知っている
恐る恐る、視線を上げていく
品のいいタキシードに、真っ黒なマント
………あ、れ
どこかで見たことのあるそれに、
私は一気に顔を上げた
まさか
そう思わずにはいられなかった
だって、顔を上げた先にいたのは
「待っていたよ、名前」
「…あなた、は……」
『1人で森に来るのは危ない』
『さっさと帰った方がいい』
あの時、私を助けてくれたひとだった