第1章 吸血鬼、赤司征十郎
2人に促されるままに綺麗に造園された庭の中を進んでいく
吸血鬼の屋敷というくらいだからどんな不気味な所かと思っていたけれど、夜の暗闇の中でもわかるほどに、とても普通の綺麗な屋敷だった
…ただ、こんな夜中にも関わらず屋敷の灯は一つもついていないことを除けば、だけれど…
沢山ある窓のどれもが真っ暗で、正面玄関についているランプが怪しげにドアを照らしているだけだ
そんな薄明かりの下、私たちに気が付いたらしい綺麗な髪のその女のひとは「あ」と声を上げた
「きたきた」
「よっ」
「連れてきたっスよ~」
私の両側から、2人がそれぞれそのひとに話し掛ける
……誰だろう
すごく優しそうなひとだけれど…
「ご苦労様、2人とも」
「はいッス。桃っちは早いッスね」
「まあね!!今日はテツくんも忙しいだろうし手伝いに来たの」
「赤司は?」
「ああ、部屋で待ってるよ」
「!」
何気ない会話の中でも、
本当に来てしまった感に襲われた
…本当に来てしまったんだ
あの、赤司征十郎の屋敷に
無意識の内に少しだけ体が震えた