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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第1章 吸血鬼、赤司征十郎





「なぁに、どうしたの」



母も何事か、と姉に近付いた



「お…お母様っ…!」



姉はわなわな震えながら母に抱き付いた


母はそんな姉を宥めながら自分も手紙に目を通し始めた



私は首を傾げながらその光景を見つめていた


すると、手紙を読み進める母の顔がどんどん青ざめていくのがわかった


…え、なに



「あの…どうかなさいましたか?」




恐る恐る声をかけると、母はゆっくりと私を見た


その目には絶望が浮かんでいた


黙って手紙を差し出されたので、私も目を通す



そこには、誰に宛てたでもなく
ごく短い文章でこう書かれていた






“今宵、貴宅の令嬢を森の屋敷にてお待ち申し上げます”





「…これは…?」



意味がわからなくて説明を求めるように母を見る


何も理解できていない様子の私に、
母は大層苛立ったように言った




「最後の紋章を見てみなさい!」


「紋章…?」



言われた通りに手紙の最後を見ると、ローマ字の“A”に蔦が絡み付いたような紋章がついていた



…これがなんだ



まだわからない私に、母はヤケを起こしたように大声で言った




「その紋章は、吸血鬼赤司征十郎の紋章よ!」


「え…」


「あの賤しい吸血鬼、この子を渡せだなんて…!」


「…そんな、どうして…」

「決まってるじゃない!」



母の胸の中で、姉が泣きながら叫んだ



「あたしがあまりに美しいから…
だから血を吸うために生贄になれということよ!

美人の血は格別に美味しいっていうもの!」




多少自意識過剰な姉に少し呆気にとられながら、私はもう一度手紙を見た



“森の屋敷”って、私も屋根だけ見たことがあるあの赤司家の屋敷のことだろう




「あたし嫌よお母様!行きたくない!」


「それは私も同じよ!
大事な大事な娘を、吸血鬼になんて渡すもんですか!」


「で、ですが…言うとおりにしないと後々何かされるのでは…?」


「なによ名前あたしが死んでもいいって言うの!?」


「あ、いいえ、そういう訳では…」





完全に混乱している姉に手をぶんぶん振って否定をすると、それまで俯いていた母が急に顔を上げた



私を見て、ニヤリと笑う




…また、嫌な予感がした



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