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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第1章 吸血鬼、赤司征十郎


なんて、あれやこれや考えを巡らせていると、コンコン、と玄関のドアがノックされた




「名前!お客様よ!早く出なさい!」



一階から、私に命令する母の声


…そっちの方が近いのだから、
自分で出ればいいものを



とは口に出さずに上っ面だけの返事をして
私は二階の姉の部屋から急いで玄関に走った




そういえば、私の好きな童話にも似たような場面があった


確かあの話では、お城からの遣いが舞踏会の招待状を持ってくるんだった



…まさかね、と思いながらガチャリ、とドアを開ける





「はい、どちら様……





……………あら?」




ドアを開けた先にはお城の遣いでもなく魔法遣いでもなく


…というか、誰もいなかった


不思議に思って辺りを見渡すけれど、やっぱり誰もいない


近所の子供の悪戯だろうか



首を傾げながらドアを閉めようとすると、
地面に一枚の手紙が落ちていた




「……?」




郵便屋さんだろうか


郵便受けがあるのにわざわざ地面に落としていくとは、なかなかいい仕事をするじゃないか



不思議に思いながら拾い上げてみると、
宛名も差出人の名前も、切手すらなかった



…宛名がないのによく届いたな

というか、切手無しで手紙を届けてくれるほど人情が厚かったのか、この国は



とりあえず、私宛である訳がないから母に手渡した




「……なあに、宛名も何もないなんて気味が悪いわね」


「なに?お母様、どうしたの?」




ソファーでペットの猫を苛めていた姉もその手紙を覗き込んだ




「あら!それ、舞踏会の招待状じゃない!?」


「でも、差出人の名前もないのよ」


「とにかく読んでみましょうよ!

…ちょっと名前、何をボーっとしているのよ
まだ掃除の途中でしょ?」


「はい、失礼します」




とにかく私には関係のない話らしいので
素直に掃除を再開しようと私は姉の部屋に戻った


否、戻ろうとした




「な…っ、なによこれ!どういうこと!?」




背後から、手紙に目を通していた姉の素っ頓狂な声がして、私は階段の途中で足を止めた



何だろう、とリビングに戻ると、
姉がわなわな震えながら手紙を睨んでいた
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