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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第1章 吸血鬼、赤司征十郎


それから数日後


私はいつものようにこき使われながらも、
あの夜のことが忘れられなかった




「(…名前、聞かなかった…)」





命の恩人の名前を聞かないなんて、我ながら不謹慎だ


これではお礼にも行けないじゃないか




「ちょっと名前!
早くあたしの部屋のお掃除をしなさい!」



はぁ…、と溜め息をつきながらも庭で洗濯物を干していると、頭上から金切り声がした


見上げてみると、窓から顔を出した姉が不機嫌そうに私を見下ろしていた




「あ…はい、ただいま」


「…ふんっ!」




ぷい、と踵を返した姉


彼女はあの夜からずっと不機嫌だ


というのも、明け方まで帰って来られなくなったはずの私がちゃんと帰って来てしまって、計画が水の泡になったからだろうけれど



私は最後のシーツを干し終えてから、我が儘な姉の部屋を掃除するべく家の中に戻った




…それにしてもあのひとは本当に誰だったんだろう


身なりからして、多分どこかの貴族のひとだと思うけれど…


テツヤというひとも、使用人のようだったし



…はて、そんな身分の高いひとが
どうしてあんな森の中にいたんだろう





『僕の森で何をしている』




確かそう言っていた


あの森はあのひとの敷地なのだろうか

自分の領地の見回りとか?


でも、だとしたらどうしてわざわざ夜に?


怪物退治の仕事でも兼ねているんだろうか



それなら、あんなに強かったのも頷ける

あんなに気味の悪い怪物をほんの一瞬で倒してしまうなんて、並大抵の人間ではできないことだ





…それにしても、本当に名前くらい聞いておくべきだった


謝礼というほどのものではないけれど、
せめてもう一度しっかりとお礼を言いたい


あの時はなんていうか、頭がパニックで

何が何だかわからない内にあのひとはどこかへ行ってしまったし




というか、それ以前に





「……格好、良かった…」




不思議な瞳の色に、整った顔立ち


おそらく私と同い年くらいだろうけれど
この村でも町でも、あんなに格好良いひとは見たことがないし噂も聞いたことがない



どこかの貴族で、あんなに格好良いのに
なぜ噂の一つも聞かないんだろうか


普通なら女性が放っておかないと思うのだけれど…



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