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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第1章 吸血鬼、赤司征十郎


「…テツヤ」


「?」




ぽそ、と呟くようにそのひとが言った


え?なに?テツヤ?



キョトンとしていると、そのひとのすぐ横の茂みから1人の男のひとが出てきた


…誰?



すると、テツヤという名前らしいひとは、私の前まで歩いてくると片膝を立ててしゃがみ込んだ



「………、」



状況がわからなくて目をぱちくりさせると、そのひとは私と視線を合わせてから後ろ手に何かを取り出した





「これは、あなたの荷物ですね?」


「あ…!」




今だに背を向けている彼とは違い、
とても丁寧な口振りだ


そのひとの手を見ると、さっき逃げる時に投げつけたバスケットがちゃんと蓋を閉じた状態で差し出されていた




「あ…はい、私のです…」


「そうですか、良かった

…ああ、中のミルクも無事ですから、安心して下さい」


「は、はい…、ありがとうございます」


「いえ、お礼だったら赤司…」


「テツヤ、余計なことは言わなくていい」


「はい、すいません。赤司君」




テツヤ、というひとの言葉を遮った彼はそのまま歩き始めた


え、ちょ…




「あっ、あの!」




私の声に、そのひとの足が止まる


どこのどちら様かは知らないけれど、
彼に助けてもらったのは事実だ



私だってお礼も言えないほど馬鹿じゃない




「…助けて下さって、ありがとうございました」



震える足でなんとか立ち上がって、
そのひとの背中に向かって頭を下げた


そのひとは1テンポ置いてから
ちらり、と顔だけ私を振り返って、
また前を向いた





「…夜の外出は避けた方がいい」


「え…」


「特に、1人で森にくるのは危ない」


「…は、はい」


「わかったらさっさと帰った方がいい、
直に彼らはもっと集まりだすから」


「…?」




それだけ言うと、そのひとは今度こそ夜の闇の中に消えていった




「ここを真っ直ぐ行けばあなたの家の裏庭に出るはずです

途中で怪物に遭遇することはもうないでしょう


それでは、僕もこれで失礼します」





まるで予め用意された台詞を話すように流暢に私に説明した後、テツヤさんも彼に続いて消えた



残された私は、ただ放心していた
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