第5章 最終章
「…いいですよ、どうぞ」
そう言った瞬間に赤司さんの腕に力が籠もる
…ちょっ、と苦しいかもしれない
「…ね?朝ご飯代わりにどうぞ」
「君は大丈夫か?」
「ええ、平気ですよ」
「……気持ち悪くなったら言え」
「はい」
絶対だ、我慢なんてするなよと
再三私に念を押してくる赤司さんは
本当に優しいひとだと思う
…初めてここに来た時は桃井さんやテツヤさんの話にいちいち驚いていたけれど、
今となってはその話こそが真実だと十分に思い知らされた
首筋にある感触が、柔らかいものから固く尖ったものへ変わったのを合図に、赤司さんは私の上に覆い被さった
彼の身体の重みが心地よい
ゆっくり目を閉じると、ぐぐ、と彼の牙が肌を突き破って体内に入ってきた
「………っあ、」
ぎゅう、と赤司さんの背中を包み込むように抱き締めた
何度となく吸われても変わらない、
魂ごと抜き取られるような感覚
痛い訳ではないけれど、自然に息が荒くなった
ゴク、ゴクリ
赤司さんの喉が鳴る音がすごく近い
首の内側に冷たい牙を感じながらも
傷口は焼け付くように熱い
…普通の人間ならこの時点で息絶えているところだ
でも私は死なない
むしろ、この痛みも感覚も
今となっては全てが快感だった
…首を食い破られて気持ちいいだなんて、
やっぱり私は人間ではないらしい
次第に上気していく自分の身体に改めて自分の素性を実感した
けれど、別に苦だとは思わない
むしろ祖先に感謝したい
だってもし私が普通の人間だったら、10年前に赤司さんに血を飲ませた時にとっくに死んでいたはずだ
こんな風に赤司さんに愛されるなんて
有り得なかっただろう
…良かった、普通の人間ではなくて
なんて思ってしまう辺り、私は心さえも人間とはかけ離れているらしい
「……ん…っ」
私の血が、身体の中から赤司さんの体内へと吸い込まれていく感覚が本当に気持ちいい
赤司さんの下で身じろぐと、
逃がすものか、と更に強く抱き締められた