第4章 恨み憎む男ー灰崎ー
目を覚ますと、見慣れた天蓋が目に入った
…、
俺はどうしたんだ
確か、森で灰崎と闘って、刺されて
…それからどうなった?
意識がはっきりしてくるのと同時に、隣に人の気配がした
ゆっくりそちらを見ると、ベッドに突っ伏している赤髪が見えた
それを見て驚くのと同時に安心した
…良かった
名前は無事だったのか
そっと手を伸ばして手触りの良い柔らかな髪を撫でる
さらさらと指の間から流れ落ちる絹糸のように細い髪
微かに花の香りがした
「…ん……、」
何度か撫でたところでその小さな頭がピクリと動く
そしてゆっくり起き上がった
「!」
顔を上げた時はぼんやりしていた瞳が、
俺を見た瞬間に見開かれた
「赤司さん!」
身を乗り出した名前の目には今にも零れ落ちそうな程に涙が溜まっていた
震える唇が、良かった、と呟いた
「良かった、赤司さん…」
「名前…」
「大丈夫ですか?傷…、まだ痛みますか?」
名前の言葉に、俺は自分の胸を触る
だが傷はすっかり消えていて、当然痛みもなかった
………
何故俺は、生きている
てっきり死んだものと思っていた
「…名前」
「はい、」
「…俺はあれからどうなったんだ」
「え?あ………」
とりあえず目の前の名前に説明を求めると、彼女は少しだけ困ったように俯いてからゆっくり話し始めた
「…あの後、火神さんや緑間さん達が助けてくださったんです」
「あぁ…」
そこは何となく憶えている
「灰崎さんが消えて、…テツヤさんが、魔法使いの虹村さんを連れてきて下さって」
「…」
ああ…、その辺からの記憶がない
あの魔法使い、来たのか
「…あなたを助ける方法を教えていただきました」
「…?」
「…あなたに、私の血を飲ませました」
ぎゅう、と自分のワンピースを握り締める名前の拳に力が入った
その首筋には小さな穴が2つあった