第4章 恨み憎む男ー灰崎ー
そんな日が3週間くらい続いたある日、
俺たちはいつものようにベンチに座っていた
その日は何故か彼女がそわそわと落ち着かない様子で、俺と目が合う度に顔を赤らめて俯いた
「…どうした?」
見るに堪えかねて聞くと、彼女は少しだけ狼狽えながらもポケットから小さな鈴を取り出した
銀色の、シンプルな鈴だった
「これ、差し上げます」
「…鈴、か?」
「はい、あの…御守りなんです」
「何のだ?」
「え、と……、あ、願い事が叶う…とか」
「へぇ…」
「あの…もらっていただけますか?」
何だか泣きそうな顔の彼女
…怪物に御守りなんて随分と滑稽な話だな、と思いつつ、断ったら本当に彼女が泣いてしまいそうな勢いだったから、そこは素直に受け取っておくことにした
「…ありがとう」
差し出された手から鈴を持ち上げると、
彼女はとても嬉しそうに笑った
…そんなに嬉しいのか
女ってつくづくよくわからないな
「御守りですから、肌身離さず身に付けていて下さいね」
「あぁ」
…っ…て、どこにつければいいんだ
しばらく手の中でチリンチリン鳴らしたあと、俺はそれを着ていたタキシードの内ポケットに入れた
それを見届けた彼女がすごく安心したように息を吐いた