第6章 彼の言葉
次の日、私が少し遅れて仕事場に行くと
何事かと思うほど、空気が張りつめていた
一人のお客様に店長と、彼が頭を必死で下げているのだ
私は離れて立ってる同僚に聞いてみた
すると同僚は
「お客様の髪を短く切りすぎたんだって...」
「...えっ、確認してなかったの?」
私は驚いて、お客様の方を見た
「さぁ、アイツ最近 さぼり過ぎたし...」
同僚の言葉に私は納得してしまってたが、
見るとお客は泣きながら怒っていた
「同窓会なんですよ!どうしてくれるんですか!」
「大変、申し訳ございません」
二人は必死で頭を下げまくっていた
「謝られても、これじゃ行けないじゃない!」
私は、急に昨日の丸山さんの言葉を思いだした
ポケットのおまじないを触り
前に進んで出たのです
「....あの、お客様、失礼します」
私は静かに頭を下げて間に入った
「....私が言うのも何なんですが、お客様は顔が細い感じの方なので、少し失礼しますね」
そうお客に伝えると、優しく切りすぎた横を上に上げてみた
「ここを、上げさせて頂いて、こちらをこんな風に流すと、新しい感じのヘアーになってお似合いになるのでは?」
違う面から見たら素敵になるかも...
私はそう思ったのだ
どんな事も見る面をかえたら変わる
私の手で動かした髪をお客は鏡越しに見た
「あら、素敵かも」
お客の怒りが少し消えた気がした
私は微笑むと自分の道具箱に動き
中から一応 何かの時にと用意してた髪飾りをだした
「もう少しだけ髪を切って整えなければなりませんが、このアクセサリーをプレゼンとしますので、ここに着けたらどうでしょうか?」
鏡に写る自分がどんどん変わるので
お客の顔が笑顔になる
「...えっ、いいの?」
「もちろんでございますよ、これは私からのフレゼントです、素敵な同窓会になるように...」
お客は、鏡越しだが嬉しそうに笑ってた
やっと私もホッとした
「....ねぇ、最後まで貴女にやって貰いたいんだけど」
お客のその言葉に、私はアイツと店長を見た
店長は頷いてたし、アイツは手を揃えてお願いのポーズだった
私は少し天を見つめ気合いを入れた
「よろこんで、素敵な髪型にさせて頂きます」
私は笑顔でお客様の髪を触り始めた