第1章 片道恋慕
「和佳奈!?どこ行くの!?」
慌てて追いかけると、和佳奈は廊下を曲がって玄関の方向へ。
ガチャッと扉の開く音が聞こえて、あたしの中で絶望が走る。
こんな時間に外に飛び出たら、何が起こることか・・・!!!
あたしが玄関に辿り着いた時、和佳奈は玄関の扉を開け放って
チョコを節分よろしく盛大に投げ飛ばした。
「ちょっと和佳奈!?何てことしてるの!?」
「ダメなの!」
扉を乱暴に締めた和佳奈は、顔を赤くして怒りに燃えていた。締め出されて、チョコは外。
「人様のものを勝手に捨てるなんてダメでしょう!?」
チョコを回収しに行こうとしても、和佳奈が大の字になって通せんぼ。
「おいおい、何?何がどうしたの?」
そこに恭輔君もやってきて、場が混乱に包まれる。
「ほら和佳奈!元に戻してきなさい!」
「やだぁー!!!」
さらに和佳奈が泣き出すものだから、あたし達は大パニック。
暴れる和佳奈をどうにか抱きかかえ、その間に恭輔君にはチョコを回収してもらった。
前庭に投げ出されたチョコは包装が乱れ、手作りの1つは衝撃でチョコがひしゃげてしまった。
「・・・恭輔君、本当にごめんなさい。」
「いえ・・・。」
義理であるはずのチョコを見下ろす恭輔君は、どことなく切なそうに見えた。