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苦いお菓子

第1章 苦いお菓子




「理事長に見つからないように渡せよ。理事長に見つかったが最後、全部没収だ。気をつけろ」
「「はーい」」
「それじゃあ、授業は終了だ。さっさと渡してきやがれ」


口が悪いぞ、烏山。
教師とは思えない言動だな。
俺は、別の意味でため息をつくと、秋音の席へと目を向ける。
だが、すでに秋音の姿はない。……一人で帰ったのか? あいつは帰宅部だから早めに帰れるが……なんだか納得がいかない。
俺は部活があるから、まだ帰れはしないが。

ふと、昼休みの事が思い返され、胸がギリギリと締め付けられる。
由島は否定していたが、秋音はあいつと……。
いても立ってもいられなくなり、カバンを抱え、教室を飛び出す。
教室から出てくる生徒達が、廊下を走る俺に驚いた視線を向けるが、そんなの気にならない。
階段を3段飛ばしで駆け下りる。

なんで、態度がいつもと違うのか。
秋音に、それを聞かなければ。
黙ったままじゃダメだ。
俺に非があるなら、直さなければ。
そうでなければ、俺は――――。



「由島君! いたいた!」




突然聞こえた秋音の声に、急ブレーキをかける。
心臓が激しく鼓動を刻み始める。
俺より離れた場所にいる秋音が、教室から出てきた由島に近寄っていく。


「……っ!」


金縛りにあったかのようにその場から動けなくなる俺とは違い、秋音は軽い足取りで、由島に小さめの箱を渡す。由島の周りに群がっている女子達が秋音を睨みつけるが、秋音は一切気にしていない。


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