第4章 月明かり
夜、みんなは作戦通りに走り去って行った。
俺は、一人動かずにまた屋敷を見ていた。
月明かり照らされている、潰れかけた屋敷の姿が
自分と重なり心が重くなっていた
これで、本当にいいのか俺には分からなかった...
俺はこの屋敷に愛着があり過ぎるからなのか...
「こんばんわぁ!」
突然、女が俺の視界に入ってきた。
また、こいつの気配を感じなかった。
下から飛び出して来た女は
俺を見て ニコニコ笑っていた。
村上「お、お前さぁ...」
俺は驚きながら、呆れて女を見た
「うん、何なの信五?」
女はきょとんしながら、俺を見た。
村上「何で俺の名前を知っとんねん?」
「仲間の人が呼んでたも~ん」
そう言いながら、
女は俺の見つめている屋敷に近づいて行った。
村上「仲間は、俺の事を信五とは呼ばんで」
そう俺が言うと女は、俺の方を向きなおして微笑んだ
「また、悩んでんでるんだぁ...」
村上「えっ?」
驚く俺を見ると、女はゆっくりと話し始めた。
「ライオンは、シマウマを食べて、
シマウマは草を食べる、
草は死んだ動物の死骸を栄養とする.....」
俺は、女が何を言いたいのか分からず聞いていた。
でも、内容にイライラする
村上「なぁ、何が言いねん?」
「ねぇ、人間の天敵は?」
村上「はぁ?」
突然の問題に答えは出なかった
感情のままに俺は答えてしまった
その俺を見ると女は少し寂しそうに笑い
「天敵のいない、人間はこのまま増え続けるのかなぁ?」
そう言うと、また屋敷を女は見つめた
女は俺らの正体すら知ってると俺は知った
村上「俺らが人間の天敵やと?」
その言葉に女は微笑んだ
「神は意味なく奇跡を起こさない...」
女の言ってる事の意味が全く分からなかった...
村上「俺らの存在が、奇跡なんか?」
女の発想に、
俺の中で何かが生まれそうになっていた
心が、少しだけ軽くなっている気がした
「増えすぎた人間の犠牲になってる動物には...」
そう、言うと女の目が月明かりで妖しく光った。
俺はこの目をどっかで見てた。
でも、どこで?