第6章 俺
俺と女は月明かりの灯る部屋で、
ずっと過ごしていた
言葉はなかったが、心地良かった
女は俺の背中に背を向けもたれていた
女の身体の重さを感じるのが嬉しい
これを愛と言うのか俺は分かんなかったが
この心地いい時間を、俺は幸せだと感じていた
村上「.....なぁ、」
背中の女に呼び掛けた
「うん、なぁ~にぃ、信五」
女は、のんきに答える
村上「俺、お前を愛しとるわ」
俺の告白に女の背中がピクッと動くのがわかった。
その後、強く背中に力がかかる、女がわざと力を入れてもたれてるのだ
村上「い、痛いわ、アホ!」
そう言いながら、女を見ると女は泣いていた
村上「うわぁ、悪い...俺が、悪かった」
泣いてる女を必死で慰める俺に、
女は泣きながら微笑んだ
「...し、信五、し、信五...」
その弱々しい声に俺は不安を感じ強く抱きしめた
俺の胸で震えて女は泣く
その瞬間に俺はこの感覚を知っていると思った
でも、どこで?
そこだけはどうしても分からなかった。
「真っ直ぐな、信五が好きだよ...」
女は胸で泣きながら言う
「....でも、私には時間がない...ないんだよ...」
その言葉に、俺の抱きしめる力は強くなる
「....全てに永遠はないんだよ、信吾...」
そう言うと女は俺の胸がら強引に離れた
「...どこに行くねん」
女は後ずさり、俺の不安がる顔を悲しそうに見つめ
静かに闇に消えて行った
俺を一人残して...
俺は一人じゃないと言ったのに、
彼女は俺を一人にした。