第6章 俺
その頃俺は、また女を探していた。
どんどん出来上がっていった部屋を
次々に開けて行った
すると、一番月明かりが入って来る二階の部屋に
女はいた。
悲しそうに、窓から月を見ている
村上「.....おい」
俺が声を掛けると、女はゆっくりと振り返った
月の光を背に、女は何ともいえない美しさだった
その美しさに言葉を失った
女は、俺の側にやってくると優しく手を握った
「....信五は、頑張り過ぎだから、
それを気をつけてね...」
何を言ってるのか俺には分からなかった
村上「おい、何を言っとるん?やめろよ」
焦る俺に女は無視して続けた
「吸血鬼だって、心は人間なんだから...。
弱くていいんだよ...強くなくても...
強くある必要はないからね..」
そう言うと、俺の頬を優しく撫でる
村上「...何を言っとるん?」
不安げに、女の手を握る
「貴方は一人じゃないから...
どんな貴方でも一人にならないから...」
俺の胸の奥が疼く
いつも、自分を誤魔化して
隠してた部分を、彼女は上手く引き出してくる
「いつも、無理して笑ってた貴方が愛しかった...
みんなの為に頑張ってる貴方が....」
この女は、俺の全てを知ってる
俺の目から突然涙が流れる
止める事が出来ない
「....もう、いい子にならないで、
これからは...
仲間は貴方を嫌ったりしないから...」
そう女は言うと俺を優しく抱きしめた
まるで母親のように、
俺は母親に抱きしめられてる子供のように
女の胸で泣いた
そして、俺の仮面はこの時に壊れたのだ。