第1章 僕は君のことを知らない
次の日、放課後。
いつものように彼女からLINEのメッセージが届く。
『今日、塾ない日だよね。今、家にいるの?』
「うん。家だよ」
『私、今、近くの公園にいるんだけど出て来れない?』
僕は上着を羽織って公園へ向かう。
……。
不良に囲まれたりして。
…仕方ない。
N中のアイドルを怒らせてしまったんだから。
多少ボコられても…。
はぁあ…怖い…。
僕は公園に向かう。
…
公園のベンチに彼女は座っていた。
寒そうに、一人で。
僕の姿を見つけると、立ち上がって嬉しそうに手を振った。
ポケットに突っ込んだ手を出して、僕も手を振った。
「一人?」
僕は尋ねる。
「うん? そうだよ」
不思議そうに彼女が返事する。
そっか。よかった。
僕たちはベンチに座る。
沈黙…。
何か用があって呼び出されたんじゃないのかな…。
「どうしたの? 今日」
おそるおそる尋ねる。
「え?」
「わざわざ来てくれるなんて」
「あ…話したくて」
彼女がニッコリと笑う。
やはり僕は見惚れてしまう。
「ら…LINEじゃなくて?」
なんとか気を確かにして返答する。
「LINE話しにくいから…」
彼女はふっと微笑む。
確かに話しにくい。
LINEは話しにくい。
だけど面と向かって話せるかというと、僕にはそうは思えない。