第1章 僕は君のことを知らない
日が暮れていく公園で、僕たちは今日も話をする。
「絵が上手だね。鈴木くん」
「いや…。真剣に絵を描いたのは小学生のとき以来だよ。小学生のときなら市のコンクールで賞をもらったことがあるけど」
「本当? 私もあるよ。小学生のとき」
「本当に? 意外な共通点がみつかったね」
「うん。私も描いてみようかな。久しぶりに。でも色鉛筆なんてどっかいっちゃったかも」
「じゃあ僕が貸してあげる。一緒に描こうよ」
「いいね。春休み…どこかに絵を描きに行きたいな」
「行こうよ。電車に乗って。そうだな…綺麗な花の咲いている所へ」
「うん!」
僕たちは春休みの予定を話す。
心が踊る。
君がいるから。
君がいるから、
僕は恋を知った。
fin