第1章 僕は君のことを知らない
「別にかっこよくはないと思う。君は本は読まない?」
『読まない。私、バカだから』
「君はバカなの?」
『ぶっ』
「あ、ごめん。失礼なことを言ってしまって」
『いいよ。本当にバカだから』
「まあ例え本当にバカだとしても、君ぐらい綺麗だと、そんなことたいした問題じゃないだろうね」
『…そっちのほうが失礼かも』
「え…あ…ごめん」
『いいよ』
その後、特に当たり障りのない会話が続き、メッセージを終えた。
僕はドギマギしていた。
失言をフォローするつもりで余計マズイことを言ってしまったらしい。
大きくため息をつく。
だいたい僕は異性と話すのは得意じゃない。
というよりも、人と話すのが得意じゃない。
同性の友達さえ少ない。
なのに、あんな。
あんな美少女と何をどう話せばいいのか、さっぱりわからないんだ…。
怒らせてしまっただろうか。
失望させてしまっただろうか。
せっかく「かっこいい」と言ってもらえたのに。