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僕は君のことを知らない

第1章 僕は君のことを知らない


「また明日、会いに来てもいい?」

と彼女は言った。

「僕が行くよ。君の家の近くの公園まで」

と僕が言うと、彼女は嬉しそうな顔をした。

僕はわからない。

だけど僕は彼女と話をしたい。



僕たちは夕方の公園で話をした。

話が弾む日もあったし、特に話さない日もあった。

彼女は別に話さなくても平気と言った。

話すのは得意じゃないらしい。

「その割には友達たくさんいるね」

って僕が言ったら

「私の友達はみんな話すのが得意。だから私が話す必要がない」

らしい。

僕たちは笑った。

20分ほどで別れることもあったし、とっぷり日が暮れるまで話し込んでしまうこともあった。

暗くなってしまうと、僕は彼女の家の前まで送った。

暗くなった道を彼女と歩く。

僕は彼女の手を握った。

彼女は僕の顔を見て微笑んだ。



自室の勉強机に座り、僕はぼんやりと考える。

彼女は僕に手作りのクッキーをくれた。

僕も彼女に何か贈りたい。

僕に作れる何かを贈りたい。

僕に何が出来るだろう。



僕は絵を描いた。

夕方彼女に会って、家に戻ると机に向かい絵を描いた。

彼女の姿を思い出し、絵を描いた。

毎日、少しずつ。

僕の画力と24色色鉛筆では、到底彼女の美しさは表現しきれないだろう。

だけど僕は描いた。

彼女のことを知りたいし、彼女に僕のことを知ってもらいたいから。

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