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紅く染まる百合

第1章 興味


「佐々木さん」
トイレの化粧台でメイクを直しているササコに声をかける。声をかけられたササコは手を止めると、声の主の方へ振り返った。

「お疲れ様です、川季さん」
「みゆきでいいですよ、同じ歳なんだし」
にっこりと笑ってみせる。ササコは少し照れたのか、ややうつむき加減で、
「分かりました、みゆきさん」
と言った。

「うん、じゃあ私もササコって呼ぶね」
笑顔を崩さずに隣に立ち、じっとササコを見つめる。
長いまつげ、くるりとした瞳、すらっとした鼻筋に潤んだ形の良い唇。肩の上でふわっと揺れる髪の毛からは、甘い匂いがした。

これは男共がほっておかないだろう、と相手の容姿に嫉妬を覚える。
事実、何度か告白をされているのを知っている。そしてそれをことごとく断っていることも。
『今はクインクスのみんなが大事なんです』が断り文句。確かに問題児ばかりで手を焼いているようだけど……

再びじっとササコの顔を見つめる。若干くまのようなものが見えるが、それ以外は綺麗に整っていて、苦労を感じさせない。いや、感じさせまいとしているのだろうか。

「クインクスのみんなはどう?」
「それがまったく……個性的なのは良いんですけどね、協調性を覚えてもらわないと」
ササコが深いため息をつく。随分と大変なようだ。

「そんなに言う事をきかないなら、バーンッと一発殴っちゃえばいいのよ」
私が殴る真似をすると、クスクスとササコは笑い、
「みゆきさんって面白いですね。そっか、バーンッと一発やってみちゃいましょうか」
同じように殴るしぐさをする。
そして二人視線を合わせると、お互いクスクスっと笑った。

──ササコは、本当に『半喰種』なんだろうか。話した感じではヒトと変わらない。

だが、ササコという人物に興味はわいてきた。その感情がなんなのか分からないが、とにかくもっとササコという人物を知りたくなったのだ。


「──佐々木ササコ、か」

自室でぽつりと呟く。
明日からどう接触してやろうか。いっそ自分もクインクス施術を受けてみようか。色々思案している内に、まぶたは閉じていった。
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