第20章 story ポルナレフ
「だが」
ポルナレフは涙を拭き、立ち上がった。
「妹の魂の尊厳と安らぎはソイツの死をもって償わなければ取り戻せない…、俺の言いたいことは分かるな?亜理紗」
「…ええ」
多分、私をこの病院にいれたまま行くことに罪悪感を覚えている。私に許しを求めているんだろう…。
私には止める理由なんて、ない。
「気を付けて、ね」
「ああ」
ポルナレフは私の頭を優しく撫でた。
「…私、見たのよ」
「何をだ?」
「……男の、姿を」
大きく目を見開いて、私の頭から手を退けた。
「奇妙な話だと、おもうかもしれない…。私には、確かに見えた…」
「何を、見たってんだ」
「…両手とも、右腕だったわ」
ポルナレフは復唱し、不思議そうに私を見た。
頭を打ったせいだと笑われるかもしれない、だけど私は確かにこの目で見た。
シェリーが手を伸ばしてくれた時、あの男はシェリーの首を絞めようと手を伸ばしていた。その腕は左腕のハズなのに、右腕だった。
私自身も今思い出してみれば奇妙な光景過ぎて、幻覚でも見たのではないかと思うがアレは絶対に、右腕だった。左腕が、右腕。
そう説明すればポルナレフは私を疑うことなくお礼を言ってきた。
「ありがとな、思い出してくれて」
「疑わないの…?」
「俺にはわかる、そいつは…俺と似たようなヤツさ」
言っている意味が解らないけれど、ポルナレフの力になれてよかったと思った。安心したせいで気を失ったのはそのすぐ後のこと。