第20章 story ポルナレフ
目を覚ませばもうポルナレフはいなかった。代わりに兄が私の顔を覗きこんでいた。心配そうに眉間に皺を寄せていた。
ポルナレフのことを聞けば、数時間前にこの病院を出て行ったのだという。それはもう切羽詰まったような顔で走っていったらしく、声をかけようにもかけられる様子ではなかったのだとか。
「ポルナレフは何処にいったんだろうな…」
「…戦いにいったのよ」
戦い?と兄は首を傾げた。
「そう、…妹の尊厳を取り戻す為、シェリーの安らかな眠りの為に…戦いに行ったの」
帰って来るかどうかなんてわからない。もしかしたら眠る前が最後の会話だったかもしれない。そう思えばもう少しだけでもいいから話しておけばよかったと後悔した。
「…でも、お前は生きていてくれてよかったよ」
「ポルナレフも言っていたわ」
私の事をせめずに。全く、…少しくらい咎めてくれてもよかったのに。
「シェリーのぶんも、ポルナレフを愛して、生きることにするわ」
腕につながれている点滴を見て呟いた。ポタリポタリとリズミカルに落ちてくる。
「…ポルナレフ」
何処へ行ったのか、どうやってその男を探すのか、全然わからないけれど元気になったら私はポルナレフの為に帰ってくる場所を作って待つことにする。
取り敢えず、散らかっていたポルナレフの部屋をきれいにすることから始めないと。
「私、いつ退院できる?」
「まぁ…1ヶ月は安静にしてなきゃだめだろうな」
「ポルナレフが帰ってきたら元気な姿で驚かせてやりたいんだけど間に合うかしら…」
「大丈夫だろ」
あなたがいなくたって、私は生きていけるだろうけど寂しい。けれどそんな事言っている暇なんてない。さっさとこのせまっ苦しい病院からでて部屋をかたずけなければ。
必ず帰ってくるポルナレフを信じて私はひたすらに待ち続ける。
END