第24章 Fire flour 空条
いつか亜理紗に俺の本心を吐き出せる日が来るのならその時俺は夢を叶え終わっているだろう。だからその時まで辛抱強く待っていて欲しい。贅沢は言わない、もしも亜理紗が結婚していても子供がいても、おばあさんになっていたとしても俺は必ず迎えに行く。
『もしもし、どうしたの?珍しいね承太郎から電話くれるなんて』
「今年の夏、日本に行く」
『え、え?本当に?』
「必ずだ」
『待っててもいいの?』
震える声で、鼻をすする音がする。
ああ、と小さく言うとありがとうと呟いていた。なんだ、簡単な事だった。すぐにでも本心を吐き出してしまえばいいんだ。
『ご、ごめんね、嬉しくって』
「安心しろ、仕事を休んででも会いに行く」
『私に?』
「亜理紗しかいないだろう」
なんて弱々しい声なんだと自分を殴ってやりたい。亜理紗を安心させるつもりが逆に安心させられたような不思議な気分だった。
「亜理紗」
『待って』
少し間をあけて、亜理紗は静かに口にした。
『続きは夏祭りで、ね』
「…ああ、わかった」
今年の夏は随分楽しいものとなりそうだ。
きらきらとした屋台だとかざわざわとする人の声が鮮明に思い出される。鮮やかに思い出される空気が懐かしい。
口約束だった。いつもと同じだった。だが俺は亜理紗に会いたい。なにもかもを投げ捨ててでも夜空に咲き誇る大輪のようなあの笑顔を抱きしめたい。
そして花火のような、堂々とした気持ちで伝える。
「最初から亜理紗を好きでいられてよかった」
END