第20章 story ポルナレフ
「シェリーは……」
「…ポルナレフ?」
歯を食いしばり、ポルナレフは泣いた。
「……死んだ」
私はその事実をなぜだかすんなりと受け入れた。そもそもあの状況下で生き残れた私は奇跡だった。普通だったら死んでいたハズだ。そう、普通だったら。
「シェリーは、…もう」
「ポルナレフ」
ごめんなさい、私が生き残ってしまって。あなたの妹、大切な妹の命を助けることができなかった。
もしあのワンピースを諦めようと私が言わなかったら、もしこのブレスレットをお揃いにしようと言わなかったら、もしあの道を通って帰らなければ、もし私がシェリーの左ではなく、右を歩いていたら…死んでいたのは私かもしれない、あの恐ろしいヒトに会わずに帰れたかもしれない。
「…ごめんなさい、私のせいだわ」
「亜理紗…?」
「ごめん、なさ、ゲホッ」
こみあげたものが涙と咳となって体の外へと出て行った。
もしああなら、もしそうなら、もしこうなら、…IFの話をしたってもう遅い。何もかも、失ってからでは何もかもが遅すぎる。
「む、無理するな」
「お願い、ポルナレフ」
――私を殺して
その言葉を、私は言えなかった。ポルナレフが私を抱きしめたのだ。
…私が何を言いたいのか、わかっていたみたいだった。
まるで。それ以上言うなというように私の震える体を優しく抱きしめてくれた。