第20章 story ポルナレフ
そんな、ごく普通のカップルだった。
「…ね、」
「どうした?」
「あの、」
まだ記憶の整理がついていないけれど、何か私は大変な事をしでかしてしまったような気持ちになっていた。
「シェリー…、そう、よ、ねえシェリーは大丈夫なの?」
「……」
「シェリーと買い物に…行っていたんだわ」
私は最後、シェリーと一緒に買い物に出かけていたことを思い出した。新作のワンピースが発売されたって言うから一緒に見に行って、予想以上に値段が高くて驚いて、苦笑いをして買うのをやめた。
そのかわりにお揃いのブレスレットを買った。私の腕にはソレが今ついている。
「…ポルナレフ、シェリーは?」
私のからだには大きな傷が入っていて、失血多量で意識不明になったのだとか。けれど私は助かった、命は救われた。
意識が崩れ落ちる寸前に見たシェリーの顔は強張った顔で私を見ていた。手を伸ばしてくれていた、私はソレを掴めずに地面に頭を打った。
どんどん遠くなる意識の中でシェリーの叫び声が聞こえた。高く、震え、怯えた声。雨がザアザアと降る中で聞こえたシェリーの声。私はそれを聞いて意識を完全に手放した。
だから、どうなったのか私は知らない。
「…どの病室に、いるの?ここは個室よね」
同じ部屋で寝ているのかと思ったがここは個室だ。私の使っているベッド以外に見当たらない。
「…亜理紗、あのな」
「お見舞いに、いかなくっちゃあいけないわね」
きっと私みたいに大きなけがを負って、今も眠っているのかもしれない。声をかけてあげないと。