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ジョジョ短編集

第16章 シンパビート 空条 ★


「付き合ってくれ」

初めて言った時、顔を真っ赤にさせて逃げて行ったのをよく覚えている。寂しいというより、愛しいという感情が沸き上がってきていた。
そんな亜理紗が見たくて昨日も、その前も、…あぁ、そうだな、明日も明後日もずっと言い続けるだろう。
お前は逃げることはしなくなったが、ずっと断っている。吐き気がする、不快な気分だと言われても俺はお前を想い続けるし、伝え続ける。

「近づかないでよ」

俺の前で一度泣き崩れたことがあった。死にたい、もうつらい、嫌い、楽になりたいと。
そう言われても俺はやめる気がなかった。ただ純粋に亜理紗の事が好きだから、満足に伝え終わるまでお前の手をしっかりと握って離したくなかったから。
俺のこの学ランについている鎖で亜理紗の事を縛って、俺から逃げられないようにしてしまえば、お前は痛みに弱いから、これ以上苦しみたくないと思うから、何処にも行かないし、逝かないだろう。

「好きだ」

泣き崩れてしまったお前は美しかった。俺は本当にお前が好きなのだとまた思えた。
きっとどんな姿になっても亜理紗を愛する自信はある。

「…あなたが嫌いよ、承太郎」

それが本心とは真逆の事を言っているのか、俺にはわからない。わからなくてもいい。俺がお前を愛しているという事実さえあればそれで充分なんだ。それで俺は安心できるんだ。
何も言わずに見ていれば、また嫌いだと呟いた。
淡々と紡がれる「嫌い」という言葉を俺は心地よく思っていた。まるで俺の心臓のように刻まれるソレに満足感さえ覚えていた。
酸素のように、血液のように、食事のように、…愛のように。
それは俺にとって必要不可欠な存在だった。いつの間にか俺自身の中でそう認識されていた。
俺の「好き」と、お前の「嫌い」が同じように紡がれていくなら、これ以上の幸せなんどこにもないのかもしれない。
俺とお前、お前と俺、二つの存在がここにあって、共に心臓を動かしていて、この地に立っている。
聞こえるか、亜理紗。俺はお前の「嫌い」で動かされているんだ。
そうだろう、亜理紗。お前は俺の「好き」で動かされているんだ。




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