第7章 軟派ボーイ シーザー
俺は亜理紗と出会う前までは女性を何とも思っていなかった。恋人らしいことをしたことはあったがあくまで゙らしい゙止まりの俺には特に何とも感じなかった。だから町行く女性を見ていても思うどころか背景の一部として見て、暇をつぶす為だけに声をかけた。
だが亜理紗と出会ってからは世界が変わった。世界に色が付いたといっても嘘にはならないだろう。それぐらい華やかに見えた。それからはどんな女性を見ても亜理紗程美しい女性はいないだとか、天使のような女性は亜理紗以外に存在しないと、失礼ながら比べていた。だからいつの日か亜理紗が本当に純粋で穢れのない天の使いと思えてきて声をかけるのが怖くなった。
だから俺ば亜理紗への為の成長゙をすることにした。
女性への話し方、接し方、態度全てを見直して生活することにした。純粋である亜理紗の横に立つために。その証としてキザというレッテルを貼られてしまったのかもしれない。そう考えればその言葉も愛おしく思えてくる。
「恥ずかしい話なんだが…初恋なんだ。亜理紗という一人の女性を心から愛した。だからこそ俺は女性への態度を改めなければならない、そう思ったんだ」
亜理紗は真剣な顔で俺の話を聞いてくれていた。途中で嫌になれば帰ってもいいと言っても俺の話を聞いてくれていた。
「練習の為に女性に声をかけていたということ?…キザでスケコマシなんて嘘だったみたいね」
「嘘をついたつもりはないさ、亜理紗の望む俺がそうであるならば俺はそうであり続けるつもりだ」
「そんなこと一言も言ってないけど」
目を細めて笑う、ああ、なんて優雅な人なんだろう。俺がこの手で触れてしまっていいんだろうか。
「シーザー」
俺の名前を呼ぶその声を、その笑顔を、姿を、全てを俺のものにしてしまいたいという衝動に駆られる。その儚げな人を俺だけのものにして閉じ込めてしまいたい。籠の中に入れてしまえば飛んではいかないだろうかと残酷なことまで考えてしまう。それほどの女性なのだ、彼女は。
「とても、素直できれいな人」
まるで俺の気持ちを代弁したようだった。その声は紛れもなく亜理紗だ。
「あなたの使う波紋も性格を表しているように透き通っていて好きよ」
「…波紋?」
俺は耳を疑った。