第7章 軟派ボーイ シーザー
「波紋を…しって、いるのか?」
「言ってなかった?私、リサリサさんの友達なの」
「リサリサ先生の?!」
鈴を転がしたような可愛らしい声で笑うと俺を見つめた。
「シーザーの努力っぷりはリサリサさんから聞いているわよ、シーザーの波紋のことも、修行のことも、過去のこともね」
それに、と付け加えるように言葉をつづける。
「私のことも考えてくれていたなんてね」
初めて亜理紗の赤く染まった頬を見た。化粧ではみることができない、女性特有のピンク色の頬だった。
「恥ずかしいわ、もう」
亜理紗は俺の手を取ってぎゅっと両手で握りしめてくれた。その手は俺の手よりもとても小さく、陶器のように美しく光っているように見えた。
「この手でたくさんの壁を越えて来たのね、シーザーが遠い人みたい」
「俺はッ」
「わかってるわよ、俺は遠い人なんかじゃないって言いたいんでしょう?」
すると手を離し俺の体に手を回して抱き付いてきた。女性に抱き付かれて初めて心臓が大暴れする。このまま死んでもいいと思った。
「抱き返しても、いいか?」
「シーザーらしくないセリフね」
その言葉をきいて、俺は亜理紗を抱き返した。想像以上に小さくてあたたかい亜理紗を俺は今、この腕で抱きしめているんだと思うと満足感が心を満たした。
「でも、この腕に絶対に帰ってくるというのならこれからも私の為に成長をしていてもいいのよ」
それが突き刺す冷たいナイフのような言葉に聞こえ、俺は思わず失笑する。
「もうその必要はないな」
「ふふ、それもそうね…ありがとう」
「こちらこそ、ありがとな」
だらしのないにやけた顔は俺に似合うだろうか?亜理紗。
END