第7章 軟派ボーイ シーザー
その後父さんは死去した。俺の目の前で、俺を息子と知らずに俺を助けてくれた。
直面し、絶望し、尊敬した。父さんもツェペリ家の血統を引き継ぐ一人なんだと心の底から尊敬した。
俺はそれまで家族を捨てて逃げて行ったと思っていた父さんを改めて見直し、本当にすごい人だと感動する。だからそれまで父さんに対して抱いていた憎しみを全て捨て父さんとその血統を誇り、何よりも強いものだと信じた。そして、爺さんと父さんの遺志、それとツェペリ家の誇り高き精神を継ぐことを決意して、遺言にあったリサリサ先生を師として波紋を学んだ。
誰よりも強い意志を持ち、何者にも負けない力を持てば爺さんや父さんを安心させられる。家族を守ることができると考えた。それに、俺はもう一人にこの手にした強さを認めてもらわなければならない。
そう、亜理紗だった。
「亜理紗」
「…あら、シーザー」
これで何度目?と口に手を当てて優雅に笑う姿を見てなんだか安心した。前のようにあの噴水の近くにあるベンチに腰かけていた。何も変わっているわけじゃあない、変わったのは俺の心境だけだった。
「俺は、強くなった」
「そのようね」
「亜理紗の事も守れる、勿論俺の家族は当たり前だ。俺は遺志を引き継いで信じられる人も得た」
すると亜理紗は
「お疲れ様」
と、それだけ言って俺に背を向けてどこかへ行こうとした。
「ま、待ってくれ!」
「何かしら」
そこで俺は肝心な事に気が付いた。本題を言っていないことに。
亜理紗とは確かにそれほど回数を重ねてあったわけではなかったが、回りくどい事が嫌いな性格と言うのだけはわかっていたつもりだった。
いつものように女性を口説く様に、俺は話をしてしまったんだ。
だから素直に伝える。
「俺との交際を、考えてほしい」