第6章 それはまるでカゼのように 花京院
「ではまず、亜理紗の気持ちを当ててあげるよ」
「私の?やってみてよ」
わかるわけないじゃない。私の気持ちなんて。
友達として付き合ってきたこの短い間で少しずつだけれど典明に対して恋心を持っているだなんてわからないでしょう?
「そうだな…その前に一つだけ教えてあげよう」
なによ、と寝たまま典明を睨み付ければ嬉しそうに口元を釣り上げた。
「君ばかり意識しているわけじゃあない」
言っている意味が解らない
なんて恍けようと思ったけれどそこまで純粋無垢なおバカさんじゃないから、典明の言っている意味を良いようにとらえてしまった。
私のことを意識しているのではなかろうかと。
「その上で亜理紗の気持ちを当ててあげる」
少しだけわざとらしく悩む動作をすると私の頭をするりと撫でた。
「僕の事が好きだろ」
なんて、自信満々なヤツ。やっぱりぶん殴りたい。でも外れてはいないから悔しい。
でもいつからわかっていたんだろう、私は今まで変わらない態度で接してきたから周りの人にも親にもばれていないはずだ。
「な、何言ってるの」
「ん?」
恍けたのは典明。あぁ、もうなんてムカつくんだろう。嫌な奴。
「さて、答え合わせといこうか」
私はキッと睨んでから
「大当たり」
と呟いて布団をかぶった。
布団の外からはよかった、と安心してクスクス笑うような声が聞こえた。
「僕もさ」
風と共に流れて行ってしまうんじゃあないかというくらい静かな音で紡がれたそれを聞いた私は、不思議と眠りのなかに吸い込まれていった。