第6章 それはまるでカゼのように 花京院
「亜理紗もだよ、いやむしろ亜理紗の方がアホだ」
「は?ケンカ売ってる?」
「まさか」
病人に対してアホだなんてケンカ売ってる以外なにがあるのだろうか。治ったら絶対にその無駄に整った顔にアッパー食らわせてやるんだから。ゲームでもめちゃくちゃにボコしてやるんだから。と、拳をわなわなと震わせる。
「僕の気持ちをこれっぽっちもわかってない」
わからない、典明みたいに頭の良い人間は何を考えているかわからないし正直分かろうとも思わない。大変そうだし。
「典明の気持ちはわからないって訳じゃないよ」
「ほう?」
挑発的な返事にまたカチンとくる。こんなに意地の悪い男子生徒だったかと考えてしまうほどだ。
「今典明は私を心配してくれていて、起きるまで傍にいようとか思っている。あわよくばゲームをやりたいだなんて考えている。違う?」
「大当たり」
ほらみろ、全然ってわけじゃあない。少なくとも大当たりという返事をもらってという事は全てあてているということ。私の気持ちをちっとも理解していない典明とは感性が違うんだよ、感性が。
「でも惜しいな、まだあてられていない気持ちがある」
それが理解できたら褒めてあげるよと何処までも今日は上から目線。なんて奴だ、もう考える事なんて面倒で頭も痛いのに、なんでそんな事を聞くんだか訳が分からない。
「もう考えるのヤダからさ、早く言ってよ」
典明の気持ちを知りたい、そう言うと片手で開いていた単行本をしおりも挟まずパタンと閉じてしまった。いいの?と聞けばどうでもいいと返事をする。なんだか今日の典明はすこしばかり頭がおかしいらしい。