第6章 それはまるでカゼのように 花京院
体育の時、女子更衣室に移動するのが面倒で男子の前だろうが構わず着替える女子を見たことがあるだろうか?多分、今時みんなそうだろうとは思っている。それを長くやっているといつの間にか下着を晒さずにうまく着替える術を習得していく。私もその類の人間だ。
「なんかごめん」
「?」
典明に醜態をさらさないようにごそごそ着替えた。
謝ったのは勿論私。うん、何故か申し訳ない気持ちになった。
「薬も効き始める頃だろうし、横になっていなよ」
大人しくいう事を聞いて口元まで布団を持ってくる。典明はベッド脇のイスに座ってまた小説を読んでいる。本当に本が好きなようで何より。
「…ねぇ」
「うん」
「典明ってさ、アホなの?」
「少なくとも亜理紗よりはテストの点数はいいな」
そうじゃなくて、と私は少しムカつく。
「頭脳的な意味じゃなくって人の気持ちを読むとかそういう事できないのかなって」
「人の気持ち?理解できるさ。何でそんな事きくんだい?」
出来てないだろ。現に私は今とても帰ってほしいと思っている。
「私の気持ち全然わかってないからさあ」
典明には帰ってほしい。このままいてくれたらもっと体温が上がりそうだし、一方的に意識しているから恥ずかしいし、好きだからこそ距離を置きたいというか。
そんな事も分かってくれないのか。
「…いや、わかってるよ」
「だといいけど」
せめて私が寝る前には帰ってほしい。そんな気持ちを察してほしい。