第6章 それはまるでカゼのように 花京院
お昼の代わりにケーキを2つ食べた後、体温計で熱を測ってみた。37℃…微熱だろう。少しぞくぞくとした寒気は残るがさっきよりは全然ましだ。薬を飲んで寝てしまえば明日にはよくなって学校にも行けるだろう。
「典明、熱37℃だった」
「少し高いようだし、今日は寝てた方がいいね」
お皿を洗い終えた典明はひょこりとキッチンから出てきて私の手首を握った。そしてまっすぐに私の部屋に向かう。
「え?」
「だから、寝てた方がいいんじゃあないかなって」
ベッドに座らされてちょっと待っててと言って部屋を出て行った。私はおとなしく足をぶらぶらさせながら待っていると典明は小さな箱を持ってきた。薬のようだ。
「熱を下げるし頭痛にも効く、これを飲めばよくなるだろう」
そう言ってお茶も手渡されて頷いてから飲む。粉末より錠剤の方がのみやすくて好きな私を典明はよく知っている。
コップを片付けに行くと典明は自分の定位置だというように私の自室にある茶色いイスをベッド脇に持ってきて座った。
「ええと」
「寝るまで傍にいてあげるから」
ほら、と寝るように指示するが私はまだ制服だ。どう寝ろと言うんだろう。
「私まだパジャマじゃない」
「じゃあ着替えればいいだろ?」
「出て行ってくれる?」
「気にしなくていいよ」
気にするわ、とジト目でみたけれど典明は本当に気にしていないようできょとんとしている。私だけが一方的に意識しているみたいでなんだか恥ずかしくて悲しかった。冷たい風が直接私にあたっているみたいに酷く体が冷やされたような気がした。