第6章 それはまるでカゼのように 花京院
「新発売のフルーツケーキと一番人気の抹茶ケーキ、それに苺のタルトもいいな」
「そんなに食べるの?」
「まさか、亜理紗は何が食べたい?」
そうだな、と並んでいるケーキを眺めながら考える。
新発売のフルーツケーキは典明の好きなチェリーが乗っているし、一番人気の抹茶ケーキは少しの苦味があって私は好き、苺のタルトも酸味があって美味しいし、そうだなあ…ケーキじゃないけどカスタードクリームがいっぱい入ったシュークリームもおいしそう。
そんな感じで目移りしてしまう私。典明はそれを横で見ていたようでクスクス笑い始めた。
「ちょ、笑わないでよ」
「ごめんごめん、じゃあすみません、これとこれと、あとこれもお願いします。あ、これも。」
「えっちょ、待って、いくらなんでも頼み過ぎじゃない?」
典明が頼んだのは私が目移りしていたケーキたちだった。店員さんはおまけにといって買わなかったシュークリームを二つつけてくれた。
お礼を言って店を出るともう少しでお昼だった。
「か、買わせちゃってごめん」
「いいや、一緒に食べたかっただけだから」
ほんと、典明は一体どこでこんなセリフを覚えたんだかわからない。私じゃなかったら絶対にイチコロだろう。私もまあ、惹かれている女子の一人だけれど。
「私の家汚いけどあがっていってね」
すると勿論、と頷いてくれる。さらさらとこんなセリフを並べて、なんだか風邪もふっとんでいきそうだ。
ゲームやらアニメやらのはなしをしていればもう私の家は目と鼻の先だ。家といっても一軒家ではなくマンションで、私は8階に住んでいる。それなりに綺麗な外観でとても気に入っている。
「いつ見ても大きいな」
典明は毎回こんなことを言っているけれどいい加減なれたらどうなんだろう。まあ私もここに引っ越してきたときは3か月くらい慣れなくて苦笑いをしていたのだけれど。