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ジョジョ短編集

第6章 それはまるでカゼのように 花京院



「にしても遠いよね」

「まあ、市外だし遠いよ」

流れていく景色を真正面に、典明を横にしてシートに座る。暖房がきいているせいなのかシートはあたたかくてついつい眠くなってしまう。だが私は電車内やバス内では寝られない、というか寝たくない。アホみたいな寝顔を晒すほど図太い神経はしていないのだ。
ああ、眠い。いやそれにしても寒い。おかしいなあ、典明はそんなに寒そうに見えないのに。

「寒くない?」

「別に寒くはないけど…熱のせいじゃあないのか?」

すると着ていた学ランを私の膝にかけてくれた。典明は交際経験がないのにこういうところで変に気がきく。恐らく素なんだろうから憧れる。
ふわりと香った典明の匂いにどきりと胸が鳴る、煩い。

「そうだ、帰りにケーキを買っていこう」

「え?別に食べたくないけど」

「僕が食べたいんだ」

一緒にね、とそんな嬉しそうな顔で言われてしまったら首を横に振れるわけないじゃないか。一度頷くと決まりだねとまた嬉しそうに流れていく景色を見やる。


のんびりと揺られていて寝ていたことに気が付かなかった。私は鞄を抱いてそれに顔をうずめるようにして寝ていたはずなのにいつの間にか典明の肩に頭を置いていたようだ。すぐに顔を上げるのも恥ずかしくて、少しだけ典明の様子を伺ってみる。
どうやら起きているようで、本を読んでいるみたい。この角度からじゃ何を読んでいるかまでは分からないけれどそんなに分厚い本ではないみたい。

「ん、起きたみたいだね」

本を閉じると典明は鞄の中にそれをしまった。

「ご、ごめん、肩借りちゃって」

「勝手に貸したんだよ」

そのはにかむような笑顔が私は大好きで、最寄り駅に付くまで私はそわそわとしながら典明と話した。




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