第24章 Fire flour 空条
電話でしかやりとりをしない俺達は互いの住所を知らない。会おうとすれば会える。何時、何処に来いと電話口で言えばいい。
だがそんな事をしなくても亜理紗が俺の事を見つけてくれるように、夢をかなえてみせる。口約束なんて信用できない。だから俺は夢を現実にし、確かなものにしてから存在意義を訴える。
亜理紗も俺も、そうして光らなければ互いの位置さえ知ることができない。見つけてほしいと訴えなければ怖くて目を向けることはできない。
もしもお前の事が好きじゃあなかったらこんなに苦しまなかっただろうに。
そんな本音をアイツは知っている。知っていて俺に好意を向ける。
それはきっと俺と亜理紗が似た者同士だから。互いの心に自分を強く植え付けることで満足することができるから。
『もうすぐ地元に帰るの』
「親の所か」
『あっちの方がまだここよりは涼しいからね』
出身地は全く違った。それなのに俺達は気が合う。
『承太郎ってなんでそんなに背が高いの?』
「さあな、食うモンくってたらこうなったぜ」
『身長よこせってよく言われるでしょ』
凹凸コンビだとよく言われた。俺の横に並べば平均身長よりすこし大きい亜理紗は小人だ。
『いい友達を持って私ってば幸せ者だよね』
「そうか」
『ほんとだよ』
男女の壁を越えて友情を手にした俺達は、たまにそんな話をする。だが、時折思う。本当に壁は超えることができたのだろうかと。
その壁に安心して依存して、寄り添っているようでただ背を向けている。今の現状を受け止めたくなくて背中をくっつけている。
そんな俺達でも、学生時代は目を見て向き合えるくらいには素直で純粋で、気持ちをあわせて隣に立つことができた。