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ジョジョ短編集

第24章 Fire flour 空条



このアメリカに来たばかりの時、浮かれていた時期もあったが常に不安と隣り合わせだった。
勿論楽しいこともあるがつらいことの方が割合的にはある。日本との違いに何度苦しめられただろうかと今思い出すと溜息しか出ない。
そんな春、留守電が入っているのに気が付いた。数は20件。一体何事かと一つ一つ聞いてみると思わず笑みがこぼれて仕方がなかった。

『承太郎!しっかり食べてる?頑張ってやるのよ!fight!』

『ちゃんとやってんだろうなぁ?しっかりやってけよ、頑張れ!承太郎ならできるぜ!』

『何て言ったってワシの孫じゃ、できないことなどない!頑張れ承太郎!』

こうして心から嬉しい、と思ったのは最後がいつだったか。
応援メッセージが心にしみて涙ぐみそうになるのを我慢しながらあの夏祭りの事を思い出す。学生の頃の、初々しかった俺達。あの時のように心が温まる。
果たしてあの時はしっかり笑えていたのだろうか、そして今も、あの時のように満足して夢に挑めているだろうか。
きっと今アメリカへ来ていなければ亜理紗と共に道を歩んでいたことだろう。そんなもしもの話をしたらきりがないが、あんなに楽しくて幸せだった日々を思い出すたびに涙が出そうになる。俺の夢を今からでもあきらめれば亜理紗は俺の横に立ってくれるだろうかと。
今更、だろう。日本に戻ったら亜理紗は俺の事をしかる。何であきらめてしまったんだ、承太郎らしくないよと。そんな事を伝える為なんだろう、アイツからのメッセージは

『承太郎の夢は小さいものなんかじゃない。胸を張って頑張れ!誇るべき素敵な夢だよ!』

だった。俺も、涙が溢れた。
帰りたい、亜理紗に励ましてもらいたい、直接言ってほしい。そんな気持ちが溢れて止まらず、似合いもしない涙を流した。
あの長い旅からいくら年月が経っただろうか。あの旅がなければ俺らの人生は始まらなかった。良いように言っても悪いように言っても、『俺達の人生はあそこから狂った』んだ。
偶然にも重なってしまった唇が俺達の世界を作り出す。事故だろうが何だろうが、あの瞬間から世界が輝いたように見えた。顔の熱をとるために見上げた夜空がいつもより数百倍も美しくなっていた。ああ、この世界は俺達が作り出した世界で唯一の安心できる世界なんだ。輝かしい思い出が甘酸っぱい気持ちを引き出してくれる。




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