第24章 Fire flour 空条
「頭うったか」
『そ、そうじゃないよ!そうじゃなくて、花火が地球丸ごと巻き込むようなでっかい爆弾だとしたらどうする?』
「開発をやめさせるな」
『ロマンなさすぎ』
地球丸ごとブッ飛ばせるような花火の話をする時点でロマンのカケラもねぇだろうが。
まあ、そんな事を言ってもふてくされるのはわかるから言わないが、何となく亜理紗の言いたいことは分かる。
【私と一緒にいてくれますか】
…そう言うのだろう。これは亜理紗が俺に告白してきたときのセリフだった。
だがその時にはアメリカ行きが決まっていて頷くことはできなかった。アメリカ行きの話がなければ快くうなずいていただろう。アイツもそれを理解しているから、そんな話題をふっかけてくる。
『いつ帰って来る?』
「さあな…意外と仕事が多いから何とも言えん」
そう言って期待だけを残す。ずるいやつだ、と心底思う。いつまでも亜理紗の記憶にあり続けたいと思うのに俺は俺自身の夢を追い続ける。亜理紗が俺を思い出すたびに俺が生きているような気がして気持ちが良かった。とことん、最悪なヤツで贅沢な人間だ。
「多分、冬には顔を出せる」
『冬?!お祭り終ってるよ!』
「初詣」
『あれお祭りじゃないでしょ』
クスクスと笑う声に俺の心臓は絞めつけられた。その声を間近できいちまったらどうしようかと震えた。
もしもお前の事をこんなにも好きじゃなかったら…なんて、そんなもの笑い話にもならねえか。夢を追いかける代償が大きすぎたってのも悩みものだな。
そう思いながら電話をきった。