第5章 endless wedge
が居なくなってから、今年でもう三年。受験勉強をしなくちゃいけないのに、の命日が近づくと何も手につかなくなってしまう。
勉強道具を一旦片付けて立ち上がると、目に入ったのは庭に生えている、俺の身長くらいの苗木。
小学校に入学する記念で、俺とで植えた桜の木。
年を重ねるごとに木は大きくなっていくのに、俺の中のは姿を変えることはない。
最期に見せてくれたあの笑顔が、心の奥底の方に『後悔』と言うちっぽけな言葉では表せない複雑な思いとなって、今も棘のように突き刺さったままだ。
机の引き出しからあのテープレコーダーを出して、イヤホンを耳にしてベッドに横たわり、の声を聴きながら思う。
は俺に、幸せな時間をくれた。
優しい笑顔をくれた。
……じゃあ、俺は?
に安らげる日々をあげられた?
楽しい思い出をあげられただろうか?
考えても考えても答えは返って来るはずもなく、ハァと大きなため息をついた。
ずっとウジウジしてるこんな姿見られたら、ならきっと『情けないなぁ』って笑うだろう。
「いつまでも心配……かけれないよな……」
イヤホンを外して親に便箋を貰ってくると、一つの決心を綴っていく。
『へ』