第5章 endless wedge
風は冷たさを増し、吐く息は白くなる。
今年もまた、冬が来た。
「帰るぞ、スガ」
「おー」
家庭研修に入る前日、今日も大地と旭と帰る。もしかしたら三人で帰るのも最後かも知れないと思うと、しみじみとした気分になった。
「そういやスガは、センターの結果どうだった?」
「ん~……もう少しやんなきゃな。大地は?」
「俺も少し追い込みが必要かもな。結構ギリギリだったし」
「大変だなぁ、進路組は……イテッ!!」
ポツリと呟くように言った旭の背中を、大地が叩く。
「他人事みたいに言ってるんじゃないよ。就職、決まったのか?」
「……マダ、デス……」
「なら、旭も頑張んなきゃな!!」
大地の真似をして旭の背中をペシッと叩くと「ハイ」と弱気な声。
明かりが少ない道に響いた笑い声は、夜の訪れを告げる群青色の空に吸い込まれていった。
分かれ道で二人と別れると、途端に静寂が襲う。
「……あ、」
ふと目の前を横切った、白。
上を見上げると、雪がふわふわと舞い始めていた。……どうりで寒い訳だ。
腕を伸ばして手のひらをかざすと、触れた瞬間、雪は跡形もなく崩れていく。
雪は嫌いだ。嫌でも思い出してしまうから。
もう会えないことは分かっている。
それでも、もう一度だけでも……
「会いたいよ……」