• テキストサイズ

恋愛協奏曲【ハイキュー短編集】

第4章  proof of life


二月――生き物が、やがて来る春を待ちわびる頃。

私の目と耳は衰えた。目はまだかろうじて見えるが、耳はもう……。

暗くて見えにくい……。何も聞こえない……。

まるで私のすべてが消えていく様な恐怖の中、孝ちゃんの笑顔だけは消えなかった。


私はおもむろにベッドの横にある、備え付けの小物入れからテープレコーダーを引っ張り出す。
これはまだ耳が聞こえた頃、亡くなった私のおばあちゃんの声が録音されたテープを聞いていたものだった。興味本意で「自分も録音したい」と言って新しいテープも買ってきてもらっていたので、それをセットして録音スイッチを押す。

「孝ちゃん。孝ちゃん、あのね……」

私の時間はきっともう無い。だからせめて、私が生きた証を残したかった。


そして翌日――私は、昨日のうちに証を残せてよかったと思うんだ。
/ 36ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp