• テキストサイズ

恋愛協奏曲【ハイキュー短編集】

第4章  proof of life


月日は意図も容易く流れて行く。

花が咲き誇り、青葉を風に揺らしていた木々はいつのまにか茶色く変化し、秋の訪れを物語っていた。

九月――学校では二学期が始まった頃、それは起こった。

いつものように孝ちゃんが来ていたある日のこと。

「孝ちゃん、悪いんだけど、冷蔵庫に水が入ってるから取ってくれない?」

「おー。ちょっと待ってろ……ほい」

「ありがと」

手を出してコップを受け取った瞬間――ガシャン!! とコップを落としてしまった。

「あ……孝ちゃんごめんね、手が滑っちゃって……水かからなかった?」

「……大丈夫。それよりは大丈夫か?」

「うん。……大丈夫じゃないかも……ベッドが」

「あ~……看護師さん呼んで来るからちょっと待ってろよ!」

孝ちゃんが飛び出したドアがパタンと閉まると、私はフゥと息をつき、手のひらをじっと見つめた。


今、力が入らなかった……。


ゆっくりと握り締めようとするが、指はぎこちなく動くだけでうまく握れなかった。


……あぁ、そっか。


変化したのは、木の葉だけじゃなかったんだ。
私の中でも変化はあったんだ。

「さっきの嘘……バレちゃったかなぁ……」

ポツリと呟くと同時に看護師さんが入ってきた。
事情を話すと看護師さんは私を椅子に座らせてシーツをテキパキと変えていく。


私にはもう、時間がない。
きっと……近いうちに、私は……。
そしたら孝ちゃんは?
孝ちゃんはどうなるの?


椅子に座りながら見た空は、ぼやけてゆらゆらと揺らめいていた。
/ 36ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp