• テキストサイズ

あいことば

第1章 あいことば





絞り出すような声でそう告げられてしまっては、頷くほかなかった。何より、真剣に考えてくれるのなら、と期待をしてしまったことも事実だった。勝算なんて無かった。どう前向きに考えようとしても、一度断られた時のことが頭を過ぎる。 中山さんは俺よりずっと大人で、俺は中山さんよりずっと子供で。冷静に考えたら俺と付き合ってくれる要素なんてこれっぽっちも見つからない。

モデルだから?キセキの世代の一人だから?人より秀でている部分が多いから?今まで自分の自信に繋がっていたものだって、中山さんからすれば関係ないのかもしれない。例え世界の大多数の女の子から好かれようと、中山さんでなければ意味はないのに。中学時代だって、言ってしまえば向こうから俺を望んでくれていた。束縛のしない、都合の良い関係が好きだった。いや、楽だった。どこかで自惚れていたのかもしれない。変なプライドがあったのかもしれない。

考えれば考えるほどに負の連鎖が続き、一睡もできないまま朝を迎えた。それからの三日間はとてもじゃないけどバスケに集中なんか出来なくて、毎日が憂鬱だった。刻一刻と約束の日までの時間が進んで行く。早く来てほしいような、永遠に来てほしくないような。どっちにしろこれを機に中山さんとは決別してしまうのだろうと、どこかで分かっていた。最初こそ様子の可笑しい俺を蹴り飛ばしていた笠松先輩が神妙な面持ちで見てくるたび、目の前が真っ暗になるような錯覚を覚えた。


/ 20ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp