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あいことば

第1章 あいことば





中山さんが口を挟む隙も与えずに、俺は彼女に恋に落ちた経緯を話した。自分でも惨めな姿かもしれないと一瞬思ったが、形振りなんて構っていられなかった。それほど、本気だった。

『…黄瀬君。』

中山さんは今まで聞き手に回っていたが、一通り話し終えた俺に初めて切り出した。どんなに想いを伝えても伝えきれないほど溢れるこの気持ちを言葉に出来なくて、それでも分かってほしくて。ぎゅっと握り絞めた携帯が響かせたのは、穏やかな中山さんの声。

『正直ね、信じられなかった。6歳も下の男の子に告白されて、それもすごく格好良い黄瀬君で。黄瀬君が言うように年齢とか年の差とか考えたし、…一時の気の迷いなんだろうって、悲しくなった。』
「っ、」
『ぐるぐると色んな事を考えて、黄瀬君が電話くれて、今もちょっと整理できてないんだ。でも、いい加減な返事はしたくないの。黄瀬君が本気だって言ってくれたから、信じるよ。』
「中山さん…。」
『三日間。』
「?」
『三日間、時間をくれるかな?ちゃんと考えたいんだ。三日後に、必ず返事をするから。』
「三日…。」
『勝手な事ばかり言ってるのは百も承知なんだけど…、時間を、ください。』

今度は、中山さんが祈るように告げた。


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