第1章 あいことば
練習試合当日。神奈川県内ではわりと強豪らしい相手に勝利し、興奮冷めやらぬまま控室へと戻る。見事勝利したということもあり、チームメイトもみんなどこか上機嫌だった。改善点や反省、最後のミーティングを終えて、俺は急いで身支度を整えてその場を後にする。練習試合自体は海常高校で行われたので、俺達は自由解散だった。それを利用し、中山さんと待ち合わせをしていたからだ。観客席の端の方で見ていたらしい中山さんは他の女子のように黄色い声を上げるわけでもなく、ただ静かに試合を観戦していてくれた。時折目が合うと笑いかけてくれて、口パクで『がんばれ』と言ってくれる。夢の様な出来事に、試合に勝ったこともありいつも以上に気分が高揚していた。
「中山さん!」
「あ、お疲れ様。」
海常高校前で待ち合わせをするといろいろと面倒臭い事になりかねないと思った為、少し先の小さな公園を待ち合わせ場所に指定していた。キョロキョロ見回せばベンチに座った中山さんがいて、駆け寄れば立ち上がって出迎えてくれる。労いの言葉と共に俺の大好きな笑顔で、
「格好良かったよ。おめでとう!」