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あいことば

第1章 あいことば





(…応援に来て欲しいって言ったら、困るッスよね…。)

純粋な気持ちだった。
もっと仲良くなりたいとか、一緒に居たいとかそういう下心は抜きにして、 中山さんに応援してもらってバスケが出来たらどんなに嬉しいだろうと想像してしまった。一度考えると逞しい想像力は膨らむもので、メールは未送信画面のまま指だけが彷徨っている。いきなり誘ったら迷惑だろうか、そもそも予定は空いているのだろうか、彼氏がいるかもしれないし。そこまで考えて、自分の中の黒い感情が渦巻くのを感じた。

中山さんが俺以外の男のものになるなんて、許せなかった。彼氏がいたら奪ってやる。それくらい、俺は彼女が好きだ。もう引き返せないところまで来ている事は知っていた。気が付いたらメールは送信されていて、こんな時に限って返信の早い彼女からまたメールが届く。奪うなんて決心したわりに恐る恐るメールを開くと、

『今度の日曜日なら空いてるよ。黄瀬君がバスケしてるところも見てみたいし、私で良ければ応援させてほしいな。』

これでもかと目を見開いて、すぐに返事を返す。震える指で練習試合の詳細を送り、思わず緩みそうになる頬を手で押さえて、嬉しさのあまり真っ赤になりそうな顔を必死に隠しながら最寄駅で電車を降りた。彼女と初めて私用で会える。漸くこじつけたその約束は、俺が恋に落ちてから2ヶ月近く経ってからの事だった。


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