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あいことば

第1章 あいことば





それからの毎日は、自分でもびっくりするほど上機嫌だったと思う。彼女に連絡先を渡したのが水曜日で、その日のお昼過ぎに俺の携帯がメール受信の知らせを通知した。知らないアドレスからだったのでだいたい予想ができ、高揚する気持ちを抑えながら受信メールを開く。絵文字も顔文字もない、シンプルなメールだった。今時の女の子らしくないそのメールに少し落胆して、でも彼女らしいかもしれないと持ち直す。周囲に流されて流行に敏感、というよりかは、しっかりと自分を持っていて芯のある女性に見えたからだ。もしかしたらそれは俺の勝手な妄想かもしれないけれど、きっとそうだと思えた。

メールに記載されていた連絡先を登録して、どうにか会話を続けようと必死に話題を探す。返事はすぐに返ってくることは稀だったけれど、彼女を想ってメールで話が出来るのは幸せだった。翌日も翌々日も平日なので、会社勤めの彼女とはいつものように同じ電車で通勤、通学をする。メールの話を交えながら朝も直接会話が出来て、ちょっとした話に笑顔で頷いてくれる彼女が本当に可愛くて。ふとした時に見せる表情や気遣いに胸がきゅんとして、溺れるように俺は彼女への想いを募らせていった。

今日の部活もハードだったが、部活頑張ってね、という内容のメールを中山さんからもらえた俺は張り切っていた。最近の俺の調子の良さにさすがに先輩達も気付いたらしく、部室でもチラチラと視線を感じる。そんな視線を一切無視して、パパッと着替えた俺は挨拶をしてから携帯を片手に部室を後にした。 中山さんの帰宅時間は日によってマチマチらしく、朝は一緒でも帰りの電車で一緒になる事はあれ以来無かった。行きも帰りも一緒だったらどんなに良いだろうかと考えながら、メールを送る。他愛のない話を送ろうとして、ふと今日の最後に監督から言われた練習試合の事を思い出した。


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