第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
その後暫く待ってみたが、植物に運ばれて来たのは数名だった。
如何やらかなりの人数が篩にかけられたらしい。
彼らの生死が気になるが、紅炎は進む事を決めた様だった。
人数が少ない為、全員で扉を押し開ける。
扉の向こうには石でできた財宝らしき物が山の様にあった。
先程までとは明らかに違った雰囲気のその部屋は、何処かの王宮の様な造りをしている。
もしかしなくても、此処が宝物庫と呼ばれる場所だと言うのは誰が見ても明らかである。
この中の何れかにジンが宿っているのだ。
紅炎は徐に部屋の中央に進むと、台座の上にあった水盆へと手を伸ばした。
それは両手を広げた程の大きさで、透き通った水が盆の八分目くらいまでを満たしている。
紅炎が触れると、水盆は波紋を作りフォンと音を立てた。
その瞬間、水から青い炎の様なものが辺りを走り抜ける。
その炎を受けたがらくた同然だった品々は、一瞬にして宝石や金へと姿を変えた。
気が付けば空中には巨大で青いものが浮かんでいる。
「我が名はエリゴス。厳正と寵愛の精霊にして、この第十五迷宮を統べる者。…王になるのは誰だ。」