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マギ 〜その娘皇子の妃にて〜

第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む


「もう一度挑戦して情報を集めるしかないか。」
「そうですね……」

紅炎も紅明もお手上げといった様子だった。
このまま何度挑戦しても成果はあまり期待出来なさそうだ。
ならば、と莉蘭は考えていた事を言ってみた。

「もし何も策が無いのでしたら、私に一度行かせていただけませんか。」

莉蘭がそう言うと、紅明が信じられないといった様子で此方を見た。
言葉の雰囲気から察したのか、「一人でですか?」と尋ねてくる。
莉蘭は黙って頷いた。

危険だという事は十分承知している。
それでも確かめたい事が有るのだ。

紅明も紅覇も「無茶だ」と言って止めた。
紅炎も何も言わないが、表情から推測するに反対らしい。

「何も考え無しで突っ込むわけではありません。危ないと思ったら引き返してきます。」

別に死にに行こうと言うわけではない。
確信は無いが、一人で行った方が良い気がするのだ。
あの虎は自分を試している。
それに、どうせ暫くは回復の為に休憩だ。

莉蘭は真っ直ぐに紅炎を見た。
紅炎も此方を見ながら何やら考えている。
暫くの間重い沈黙が続いた。

然し気持ちが通じたのか、「良いだろう」と紅炎は莉蘭の提案を承諾した。

「兄王様!」
「いいの⁉︎」

紅明と紅覇が反対の声を上げる。
然し紅炎は聞き入れなかった。

「構わん。危なければ引き返して来るのだろう?」

莉蘭は確りと意志を持って「はい」と頷いた。
それを見た紅炎が挑発的に笑う。

「だが一人で行って死なれても困るからな。俺も同行する。」
「え、然し…」

ちらりと紅明の方を見ると、半ば諦めたかの様に額に手を当てて俯いていた。
止めても無駄、という事を理解しているのだろう。
紅炎の性格を考えれば止められない事は何と無く分かるし、この部隊の最高責任者は彼だ。
兄弟とは言え、最終的には権力がものを言う。

それにしても、何故この人はこう何時も上から目線なのだろうか。
危なくなれば引き返して来ると言っているのに。
心配してくれているのか如何かは定かでは無いが、何れにしろ一言余計である。



本当、素直じゃない。
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