第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
「何て言うか、強いやつが居なくてつまんないねー。」
そう言って紅覇は頭の後ろで手を組み、此方を振り返って後ろ向きに進みながら歩いていた。
その表情は普段のにこにこしたものとは違って退屈そうだ。
この部隊は紅炎や紅明の部下の中から選抜された優秀な人材、もしくは立候補者によって編成されている。
中には穏やかな性格の人も居る様だが、大半の人は勇猛果敢な、と言うより、血気盛んな人達だ。
その面々が紅覇の様に何処か物足りない様子だった。
「紅覇、前を向いて歩きなさい。危ないですよ。それに、大した敵が居ないのは良いことです。」
流石と言うべきか、紅覇を注意する紅明の姿はまるで母親の様だ。
紅覇は素直に「はーい」と言うと、そのままくるりと回転して前を向いて進み始めた。
今現在に至るまで大した敵は無く、全員無事にここまで来ていた。
大木はもう直ぐ其処だ。
まるでピクニックにでも来たかのような光景に、莉蘭は思わず笑みを溢していた。
「皆さん怪我せずに済みますしね。このまま最後まで行ければ良いんですが。」
莉蘭がそう言うと、前を歩いていた突然紅炎が止まる。
「如何やら無理なようだ。」
紅炎の言葉を合図に全員が臨戦態勢に入った。
前を見るとそこには大きな虎が眠っており、その背後にある大木の根元には扉らしきものが見える。
扉に近づくには虎を避けては通れないようだった。
「行くぞ。」
その言葉に周辺の人達が頷く。
「掛かれ!!」
「「おぉぉぉおお!!!!」」
全員が一斉に雄叫びを上げ駆け出した。
紅明は後ろで指揮をとり、紅炎と紅覇は最前線で戦っている。
莉蘭も兵士達に混じって剣を振るった。